千葉県ぐるっとウォーキング 第24回 柏たなか駅~御老公の湯(境町)

 今回は本ウォーキング後半のハイライトである千葉県最北端の「関宿」をめざすウォーキングである。「ちーばくん」の鼻先に向けて歩いていく。

図24-1 ちーばくん

 この「関宿」だが「せきやど」「せきじゅく」のどちらの読みが正しいのか? 千葉県の「関宿」は「せきやど」である。住所は千葉県野田市関宿町(せきやどちょう)だ。日本には、あと 2 か所「関宿」がある。ひとつは三重県にある東海道の宿場町で、住所は三重県亀山市関町である。こちらは「せきじゅく」と読む。もうひとつは宮城県苅田町七ヶ宿町の「関」で、「白石川」に沿った「七ヶ宿街道」の宿場町が「せきじゅく」と呼ばれている。これらは地名の「関」+「宿場町」で「せきじゅく」となる。一方、千葉県のそれは地名自体が「せきやど」なのだ。その由来は「日本大百科全書」によれば「河川交通の要所をなし、関所があって宿場でもあったことに由来し、現在も関宿の地名が残る」とのことである。東と北が茨城県、西が埼玉県である。つまり、千葉・茨城・埼玉の 3 つの県の境となる場所が「関宿」である。「関宿」の対岸の茨城県の町は、その名も「境(さかい)町」である。

 今回の行程だが、「柏たなか駅」から「利根川」沿いに北西に向けて歩く。この距離がおよそ 30 km 。「関宿町」には宿泊設備がないので、茨城県の「境町」に泊まり、翌日(第 25 回)に「関宿」を見学し、今度は「江戸川」沿いに南下して東武アーバンパークラインの「川間駅」まで歩く計画である。ということで、今回は「千葉県ぐるっとウォーキング」の中でも一番長い距離を歩くことになる。

図24-2 行程

 2023 年 10 月 17 日「柏たなか駅」を 8:08 にスタート。駅の近くに「姫宮神社」という名の神社があるようなので、そちらに立ち寄ってみる。

写真1 柏たなか駅

 神社は「小青田(こあおた)」という地域にある。この地区の氏神で、天正 13 年(1585 年)の創建と伝えられている。祭神は「伊邪奈美神(イザナミノカミ)」で、町会のホームページには「姫宮様という方は、神はオスベラカシという髪型で、白い襦袢(じゅばん)と雪袴(ゆきばかま)という着物をお召になっております。その着物の上に白地にカゴメ模様の羽織をまとっていらっしゃいます。足には浅沓(あさぐつ)を履かれ、右手には鈴、左手には椿の小枝を持っていらっしゃいます。このお姿が掛け軸となり、神社に祀られております。(中略)小青田では、昔から神様が身につけているもの、椿やカゴメ模様のついている着物や家具は持たず、身につけることもしません。黒い下駄も履きません。椿の木は神社の境内以外には植えない、また亀も飼ってはいけない、という習慣を何百年も続けております。今でも、小青田に生まれた人、小青田に来て住んでいる人はこれを守っています。」とある。お参りして、今日の旅の安全を祈願した。きれいに掃除されている。一見して、人々に大切にされている神社であることが分かる。

写真2 姫宮神社鳥居
写真3 姫宮神社拝殿
写真4 姫宮神社本殿

 神社から「柏たなか北公園」を経て、県道 7 号線に入り、30 分ほど北へ歩くと「利根運河」に出た。「利根運河」とは、「利根川」と「江戸川」を結ぶために明治 21 年に開削された運河で、全長約 8.5 km の日本初の西洋式運河である。ここは東の端で、西端には東武アーバンパークライン線の「運河」という駅がある。写真は「水堰橋」から東側の景色で、「運河水門」が見えている。

写真5 利根運河と堰

 野田市に入る。「野田市スポーツ公園」で休憩予定なのだが、その前に地図で見つけた「三ツ堀香取神社」によって行こうと思う。県道 7 号線を右折し、「野田市パブリックゴルフ場ひばりコース」の手前で左折して集落の方へと入っていくと、「円福寺」の隣に神社があった。

写真6 三ツ堀香取神社鳥居

 天正年間(1573-93)の創建で、「香取神社」なので祭神はもちろん「経津主命(フツヌシノミコト)」である。拝殿の欄間には立派な龍の彫刻がある。本殿へと廻ると、二重構造の建物の中に本殿があった。本殿には立派な彫刻が施されている。

写真7 三ツ堀香取神社拝殿
写真8 三ツ堀香取神社拝殿の欄間
写真9 三ツ堀香取神社本殿
写真10 三ツ堀香取神社本殿のの内部
写真11 本殿の右面胴羽目
写真12 本殿の背面胴羽目

 当日は全く気づかなかったのだが、家に帰ってこの項をまとめていると、ここが「福田村事件」の現場であることが分かった。地図で近くに「福田村事件慰霊碑」があるのは事前に知っていたし、NHK のニュースで報道していたのも聞いていた。が、頭の中で事件とこの場所が結びついていなかったのだ。「福田村事件」とは、関東大震災の直後、四国から千葉へやってきた行商人達が朝鮮人と疑いをかけられ、自警団によって幼児、妊婦を含む 9 名が殺害された事件で、100 年前の 9 月 6 日のことである。NHKのサイトに詳しい情報がある。生き残った男性が襲われた時の様子を綴った手記の一部が紹介されている。

手記の記述

「取井ノソバデ、休ミテ居リタ処エ/青年会、シヨボ、在郷軍人ガキテ/
鮮人ジヤトユウ人モアリ/棒ヤトビグチヲモッテ頭エブチコンダ」

(鳥居のそばで、休んでいたところへ/青年会、消防、在郷軍人が来て/
「鮮人じゃ」と言う人もあり/棒やとびぐちをもって頭へぶち込んだ)

 ここに出てくる「鳥居のそば」の「鳥居」は写真 6 の鳥居なのである。まさに事件の現場に立ち寄ったわけである。事件については、辻野弥生さんが本に書いているし、また最近映画も公開されている。今年の 9 月 6 日、犠牲者を追悼する式典が開催されたとのことである。まことに痛ましい事件であるが、それを引き起こしたのは「差別意識」と「集団ヒステリー」であり、これは今もなお存在している。つい最近も「コロナ自警団」なるものがニュースを賑わせたではないか。

 ウォーキングに戻ろう。Google Map はここで、利根川沿いの自転車道へ誘導するのだが、実際には自転車道との間に大きな段差があり、雑草で覆われていて、アクセスできなかった。時々、こういうことが起こるので、Google Map の経路検索も完全ではない。しかたなく「野田市スポーツ公園」まで再検索して行路を決定した。ロスタイムが生じて、公園まで 50 分かかってしまった。

「野田市スポーツ公園」は整備が行き届いたきれいな公園である。遊具施設があるので親子連れを数組みかけた。ここから利根川土手の自転車道に入る。土手の横にある道路を上っていくと、自転車道に出た。右側が「利根川」のはずだが、川まではだいぶ距離があるようだ。ここをずっと歩けば「関宿」に達する。

写真13 野田市スポーツ公園
写真14 利根川土手の自転車道への上がり口
写真15 利根川土手の自転車道

「芽吹大橋」の手前まで来た。時刻は 11:31 である。この道、自転車道だけあって、ときどき自転車とすれ違う。走っているのはほとんどロードバイクだ。ママチャリは見かけないし、歩行者も見かけない。それにしても、今日はいいお天気だ。朝は長袖シャツの上にパーカーを羽織っていたが、今はそれらを脱いで半袖のTシャツ姿である。快適なウォーキングといいたいところだが、とても単調だ。景色が全く変わらない。ただひたすら歩くだけ。これは苦痛である。

写真16 芽吹大橋

 自転車道を歩き出してから、そろそろ 3 時間になる。1 時間歩くたびに短い休憩を取る。水分も補給する。用意してきたおにぎりも食べた。この道を 3 時間も歩き続けると、さすがに嫌になってきた。地図によれば「下利根大橋」のそばに「将門の飯塚」がある。そこで、全行程の 2/3 である。さらにコンビニがあるのだ。コンビニでコーヒーを飲みながら休憩する。そんな光景を頭に描くと元気が出て来て、急いで土手を駆け下りた。

写真17 下利根大橋付近の県道7号線

 道標が出ている。この先で県道 162 号線と交差しており、右に行けば「下利根大橋」、まっすぐ行けば「境」とある。「境」とは茨城県の「境町」である。コンビニはこの交差点にある。

 美味しいコーヒーを飲みながら持参したクッキーを食べた。疲れていると、熱いコーヒーがとても美味しい。どんな高級料理も腹一杯なら美味しいとは感じない。疲れ果て、喉が渇ききった時の一杯のコーヒー、至高の飲み物だと思う。

 時刻は 14:10。今宵の宿は「境町」だ。ここからだとまだ約 10 km ある。16:00 頃には入りたいと思っていたが、2 時間以上はかかりそうだ。「将門の飯塚」だが、そちらに廻るともっと時間がかかる。ということで、このまま宿を目指すことにした。北へ向けてウォーキングを開始する。土手際の道をしばらく歩き、再び自転車道へ上った。おおつ、利根川が近くに見える。

写真18 土手際の道
写真19 自転車道からの利根川の眺め

 ずっと川辺に○○ km という看板が立っている。「銚子」付近の自転車道では、これは「海からの距離」つまり銚子の河口からの距離を表していた。ところが、この辺りの道標は距離表示だけて、上の部分が消えてしまって見えない。ずっと何だろうと思っていたら、この道標ではかろうじて文字が読めた。やはり海からの距離だ。114 km! 「銚子」を出てから今日まで 6 日目である。一日 20 km とすると 120 km、まあ、そんなものだろうと思いながら歩く。「筑波山」が右手中央にかなり大きく見えている。千葉県の北の端まで歩いてきたのだと実感する。

写真20 海からの距離
写真21 筑波山

 さきほどから正面遠くに建物が見えている。あれが今日の目的地ではないかと思う。橋が見えてきた。「境大橋」である。なんと「海から120 kmです」と標識が立っているではないか! さきほどの計算通りだ。左手にはお城も見えている。あそこが「関宿」なのだ。

写真22 境大橋が見える

「境大橋」を渡り始める。時刻は 16 時。あと少しだ。橋の上から「関宿城」がよく見えた。「利根川」を見ると、空を映しこんだ鏡のような青い水面が美しい。ところどころに洲があり、草が茂ってもっこりしているのがアクセントになっている。銚子の河口に比べれば、ずいぶんと川幅も狭くなった。

写真23 境大橋から見た関宿城
写真24 境大橋からの利根川の眺め

 橋を渡り終え、右に下りていくと大きな駐車場があって、商業施設が並んでいる。この 2 階に今日宿泊する「御老公の湯」がある。時刻は 16:15 である。今日の歩行距離はなんと 33.5 km、時間にして 8 時間 8 分だった。さあ、熱いお風呂に入り、冷えたビールを飲もう! と思わず足早になった。

写真25 御老公の湯へゴール
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